安全で快適な帝王切開手術をめざします

【解説動画】当院の帝王切開手術について

**安全かつ快適な理由**

硬膜外麻酔を最大限活用するため痛くありません。手術中も、手術後も。
手術というと思い浮かぶのが痛み、苦しみ、辛さ、などなど。どれをとってもなるべくなら避けて通りたいものです。通常、産婦人科医院や大病院で行われる帝王切開手術では脊髄麻酔が選択されます。脊髄麻酔はかなり以前より行われている、日本ではもっとも普及している麻酔法のひとつです。やり方が簡便で、麻酔科医師以外でも容易に行えるのが特徴です。その代わり、欠点もいくつかあります。最大のものは背中に麻酔注射を行うため、一度行ったら追加の注射ができないことです。背中からの注射は体をえびのように曲げて行います。もちろん手術中にこんなことはできません。ロケットのように一度出て行ったらあとで付け足すことは不可能です。手際よく麻酔が効いて、手術が滞りなく進めばよろしいのですが、実際の手術に毎回幸運ばかりが微笑むとは限りません。何より麻酔の効果も人様々です。途中で麻酔が切れてきた場合はどうなるのでしょう。運良くそこに麻酔科医師がいれば通常全身麻酔に切り替わります。運悪く麻酔科医師がいない場合はどうなるでしょう。患者さんは頑固な苦しみに自力で耐えないといけません。「もう少しで終わるから、頑張って!」脂汗を流しながらの頑張り麻酔に切り替わります。そんな話は誰でも一度は耳にしたことがあるはずです。ひるがえって硬膜外麻酔はどうでしょう。聞きなれない麻酔法だと思う方もいらっしゃると思います。しかし、この麻酔法こそ、ここ10数年以来腹部手術(おなかの手術)の麻酔法を画期的に変えて普及しつつあるやり方です。昭和天皇が最後にお受けになった手術での麻酔もこの手法が行われたため、硬膜外麻酔の名前が広がったようです。脊髄麻酔の親戚のようなものだと考えれば結構です。ただし、脊髄麻酔の欠点をことごとく克服したやり方だということが最大の違いです。

硬膜外麻酔について

  1. 麻酔薬を何時でも追加で投与することができるようになります。背中に注射することに違いはありません。(ただし、充分痛み止めを行うため、注射そのものの痛みはほとんど苦にはなりません。)
  2. つまり麻酔切れの心配がありません。患者さんの特徴にあわせて充分かつ必要なだけの麻酔薬を何時でも使用することが可能です。したがって手術中に痛みでもがき苦しむ心配はありません。
  3. 麻酔薬によっておきる体への負担が少なくなります。硬膜外麻酔は脊髄麻酔より麻酔の効き目がゆっくり現れます。したがってその分心臓などにかかる負担が少ないことが明白です。もちろん、帝王切開手術の場合おなかの赤ちゃんにも当てはまります。
  4. 手術後の痛み、辛さが非常に楽になります。硬膜外麻酔は背中に注射する時、髪の毛のように細い管をそっと背中に入れておきます。これは手術が終わったあとでも有効活用します。当院では使い捨ての小型携帯用ポンプをそれにつなぎ、手術後2日間は少しづつ麻酔薬が体に入るようにします。これは全員に行っています。脊髄麻酔で行った手術後の場合、当然麻酔が切れると激痛に襲われます。それを少しでも和らげるため、一般の病院では麻薬系の薬を使い、筋肉注射として投与します。しかし、呼吸抑制などの怖い副作用もあって、ごく少量しか使えません。「手術したんだから、痛いのは当たり前でしょう。もう少し頑張りなさい。」と看護婦さんにしかられるのがオチです。後はひたすら痛みと吐き気にがまんします。まる2日間の辛抱です。硬膜外麻酔をきっちり活用すればこんな悪夢を体験しないですみます。くらもちレディースクリニックで手術を行った患者さんは手術後テレビを見ている方が比較的多いようです。「体力が落ちているかもしれないのでもう寝ましょう。」と言うと「赤ちゃんが生まれて嬉しくって、なかなか眠れません。」ほとんどの患者さんは痛みらしいいたみを知らずに7日後退院をしてゆかれます。一生に一度か二度の手術体験ですので、無用な痛みを味わう必要はまったくありません。
  5. くらもちレディースクリニックでは帝王切開手術患者さん全例に硬膜外麻酔を行っています。また、手術中赤ちゃんが無事生まれ、ご本人が赤ちゃんをご覧になったあと、医学的適応のある場合には全身麻酔に切り替え、ゆっくり眠ってもらうようにしています。赤ちゃんが生まれるまでは手術が始まってから数分の時間です。『痛くは無いけど起きている』という状態です。はじめから全身麻酔を行うことはできるだけしません。全身麻酔はおなかの赤ちゃんに悪影響を必ず及ぼします。また、当然ながら赤ちゃんの産声を聞くことができなくなります。
  6. 硬膜外麻酔が脊髄麻酔より優れていることは医療関係者に聞けば誰でも知っていることです。ではなぜいまだに脊髄麻酔で帝王切開手術を行う病院が大多数なのか。それは一般の産婦人科医師には脊髄麻酔しかできないからです。あるいは麻酔科医師ですら硬膜外麻酔のできない方が大勢います!麻酔方法は車のエンジンに当たります。一見見えなくとも実は大変重要です。