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その6 – 夢のような話

夢のような話。何と素晴しく、楽しそうな出来事でしょう。大人も子供も夢にはあこがれの意味を込めます。子供のころ夢はなあに、と聞かれ、パイロットになるんだ、シンデレラになりたい、と答えたこともあるでしょう。夜のあいだ人は寝ているうち何回も夢を見ます。つまり何回もおとぎの国へ行っているのです。どんなに切羽詰まった人でも、外出がままならない人でも寝てる間は自由な楽しい空間へ抜け出し、旅に出て、朝にはこっそりと寝床に戻っているのです。残念なことにそのほとんどを覚えていません。夢を見て数分以内に起きないと永遠にその内容は忘れ去られてしまいます。まれに覚醒した時覚えていた夢でも頭がはっきりした時にはうたかたの夢のごとく消え去ってしまいます。忘れてしまうのは本当にもったいないことです。

 

ところで院長夜話といいながら今まで夜に限ったお話がありませんでした。筆者は職業柄夢の途中に起きることはしばしばです。夢に起こされることすらあります。意外と夢は身近な存在です。興味深い夢の場合、起きたついでにカルテに記載するつもりで時々内容を記録することにしています。夢の世界では年齢も、善悪も、過去も未来もありません。遠出して呼び出されても全然平気です。この夜話では悪友・千成表太郎氏(せんなりひょうたろう・芸術家)、Chopin・de・MISORA氏(ショパン・ド・美空・文化評論家)らの悪夢、精神科的白昼夢も交え興味深いいくつかの夢を取り上げました。さっそく俗世間から秘密の通路を通した極彩色、モノクロームの旅を垣間見てみましょう。脚色、省略、付加、加工等ない成分無調整の内容です。つじつまが合ってない部分はお許しを。何の悪意もありません。夢の中に素直に入れない方は次の夢の話を読み、ゆっくりと夢に入る準備をしてゆきましょう。夢のような話か、夢の話か。また夢の中で逢いましょう。

 

 

 

原著 夢のような話―眠れぬ夜の胡蝶は舞う

Cases of nightmare those were experienced around the sleepless nights where many beautiful butterflies flattered about everywhere in those sights. A beautiful dream.

○ Kazuya KURAMOCHI, Hyotaro SENNARI, Chopin de MISORA,

概要

フロイトの精神分析論は長期間にわたり定説であるとされてきた。今回我々は稀にしか遭遇し得ない貴重な症例の入手と解析に成功した。特にR2-D2遺伝子領域に関し分子生物学的解析法での定量的評価を行い複数の新知見を得た。高度疲労環境下におけるC3-po因子出現の陽性的中率は常に現実の脅威を上回り、さらに社会医学的条件下でのXASM-3予想に一致することが判明した。更なる夢の解析が望まれる。

(筆者注;学力不足と思われる方は概要の最初と最後の行のみお読みください。気にせずお進みください。筆者が夢の中の大学で必死に聞いた苦悩の講義を一部再現しました。)

Key words :  dawn, nightmare, butterfly, insomnia, exhausted, dear wife,

the goddess

 

 

夢の話―症例1   肉を売って大金持ちだ!                    盛夏

 その大きな沼地は人気のない田舎にひっそり薄暗く横たわっていた。足元のぬかるみは人の魂を引き寄せ、茂みは先をゆく人の姿を隠した。

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元々はダム湖だったと宿の人が話していたが、立派なダムはすでにない。古びた巨大なコンクリートの塊が来る途中にそびえているだけだった。夕暮れがますます混迷を深めてきた時、一緒に来た友人が叫んだ。なにかいるぞ。

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ぬかるみに苦労しつつ近くの友人のもとへ駆けつけると茂みの向こうの枝の近く、直径1メーターはあろうかぬめっとした物体が濁った湖水に入ってゆく。大きな蛇か。それにしては大きい。見るまもなく消え去り、茂みが薄気味悪い静粛を飲み込む。もう一人の友人が太い枯れ枝を拾ってきてさっそく辺りをつつき出した。嫌な予感がした。思った途端そいつはいきなり泥沼の水を持ち上げ、大きな口を開けて友人をひとのみにした。

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気付いたときは折れた枯れ枝がそこに落ちていた。これはいけない。慌てふためいた残りの友人と二人で薄暗い茂みの道をたどり、一目散に宿へ引き返した。宿の親父によると昔からその沼は人食い鰻が出るそうだ。道理で沼の雰囲気が薄気味悪いわけだ。早く言えよ。早々県警に連絡し、今度は屈強なお巡りさん二人を同行し夜の沼地に戻ってきた。今度は大丈夫、と思った時、長さ20メーターを越えるそいつが音もなく沼地から這い出し見るまもなくお巡り一人を飲み込み、静かに去っていった。一瞬の出来事だった。こんなことじゃいけないと思い、その夜は再度撤退することにした。粗末な宿で夜を明かし、明くる朝早く宿で知り合った食肉業者のおっさんとその沼地へ再び行くことにした。いやー、今は鰻、高いからねー。下品な声でおっさんは言う。沼につくと陽が高く水は澄んでいて巨大鰻の居場所は直ぐにわかった。

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ノロノロやって来たところをいとも簡単に昨日の枯れ枝で喉元を突き刺し、そいつはあっけなく倒れた。巨大なお肉に化した鰻を食肉業者のおっさんに売り渡した。ヌメヌメした皮はなめし革業者に売ればよかったなと後で気が付いた。まあいいか。業者がさっそく巨大鰻の一部を切り取り焼いている。

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いやー、脂が乗っていて旨いですねー。おっさんが言う。どれどれと自分の分を一口試食してみると本当に美味しい。ここまでこくのある肉は早々お目にかかれない。でも、昨日の人喰い分はちゃんと消化してるんだろうなあ。もう一日待った方がよかったかな。ちらっと脳裏をかすめる。全く人を食った話だ。

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沼の外には食肉業者が手配した冷凍車がもう何台も来ていて活気づいている。これで俺も大金持ちだ。

 

 

考察―今晩のおかずはウナギにすべきである。昔読んだ天才バカボンではバカボン一家がウナギ犬をかば焼きにしてうまそうに食べていた。

 

結語―これでいいのだ!

赤塚不二夫公認サイトこれでいいのだ!!より

 

 

 

夢の話―症例2   緑の京王線はいつまでも元気よく            凍る冬

朝の千歳烏山駅の雰囲気は妙だった。ホームの端にある踏み切りを渡る人は少ないのにホームの中は大勢の人で一杯だ。ラッシュアワーなのでやってくる電車はすべてぎゅうずめだ。ホームで混雑にイラついた乗客の一人が後ろからいきなりヘッドロックをかけてきた。すぐにはずせるとたかをくくっていたが、体が思うように反応せずなかなか取れない。いい加減にしろと言おうと思った途端取れて楽になった。

(写真掲載準備中)

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相変わらず電車は超満員で、特に急行は開いた扉から乗客が溢れ出す。車内から弾き出された大勢の乗客はホームでため息をついていた。これでは乗れない。

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撮影 三谷烈弌 (RM LIBRARY163「京王線グリーン車の時代」ネコ・パブリッシング刊より
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次の緑色の各停に乗ろうと思い諦めてしばし待つ。おかしな景色だと思ったらいつもの新宿方向でなく八王子方面のホームにいる。今日は日医大の新丸子校舎に稲田堤経由でゆく日だ。ようやく緑の各停が入線しウンザリするほど満員の乗客を吐き出した。やっぱり無理だ。これも見送り。いつになったら乗れるのか。そう思った時とても古い、京王線の形式にない、妙に丸い顔付きの電車が入ってきた。

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古い。4輌編成で、中はがらがらだ。夕刻のにぶい光が古い車輌を寂しく照らす。ゴロゴロと扉が開き、中へ入る。乗客はせいぜい二三人だ。

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なんと座席は近郊型電車のボックスシートがメインで、数人がけの長椅子もある。どれも白いシートカバーが丁寧に掛けてある。扉の一番近くにあった椅子へ腰かける。夕日を浴びつつオールドカーはさっそく千歳烏山駅を発車した。もしかしてグリーン料金が要るのかと思ったら案の定車端部にこっそり小さな券売機が設置してある。40円と書いてある。券を買おうと思い席をたったところでヘラっとした車掌がやって来た。そう言えばここは一番後ろの車輌だった。小銭入れから十円玉が四枚こぼれ落ちた。車掌の足元に集まった十円玉をいいですよと言いつつ車掌は拾い向こうへ行ってしまった。最後尾の窓から線路が流れゆく。線路の柵は適当で、その柵に囲まれた明るい野原をガタゴトと古い電車はすすむ。どこだ。こんな光景はなかなかお目にかかれない。

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優雅で明るい車内から線路は気持ちよく伸びてゆく。スマホを取りだし普段見られない光景を写真に納めてゆく。最初の数枚は上手に取れたが、そのうちスマホのカメラの調子が悪くなってきてシャッターがうまく切れない。そんな事はお構いなく適当な線路を電車は進む。線路は専用軌道のそれでなく、世田谷線風の簡単な軌道だ。柵も無いところが多い。

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電車はなんとなくペコちゃん風だ。色はチョコレート風で少し違う。そう思っているうちにつつじヶ丘駅に着いた。電車のドアは開かない。やっぱりと思った。すぐ後に緑色の各停がやって来て、さらにもう一台急行の通過待ちだ。つまりこの古い電車は二重の通過待ち状態にある。だからセカセカした多くの人にこの電車は無視されているのだ。遅刻しないかな。

考察―緑色の京王線電車は冷房のない各駅だった。幼稚園生のころから子供達だけで乗っていた。連結器の幌が広く友達と先頭から最後尾まで走り抜け、たびたび運動会をした。頑張って走ってもどこかで必ず急行か快速に抜かれる。残念な人生か。子供心に考えた。

結語―狭い日本そんなに急いでどこへ行く

 

 

 

夢の話―症例3 焼肉食い放題                               晩夏

 

その飛行機はやたらと巨大だった。広大な牧場の中に位置する我が家の、すぐ上を仰ぐように飛んでゆく。

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突然轟音と共に両翼がもげ、巨体がゆっくり墜落し始めた。仲間が発見し、大騒ぎをしている。僕らはそれを家の裏の小高い丘から口を開けて眺めていた。既に胴体だけになったそれは恐ろしい小爆発を繰り返しつつ、丘のすぐ向こうの大地へ墜落した。同時に超巨大爆発を起こした。光景は余りに衝撃的だ。見たこともない閃光を発し、怒り狂う巨大な火の玉は、目の前で火山が大噴火するのとまるで同じだ。真っ赤に燃える大きな溶岩状の破片が飛んできて、皆は丘の上から後じさりする。僕は最前列に留まり地面が少し窪んだ場所で狂った火の玉をやり過ごそうと必死に頭を下げる。最後の轟音と共に大きな、赤く焼けた破片が次々飛んできて、焼き殺されそうになる。頭の後ろが熱い。もうだめかと思ううち、気を失った。どのくらい時間が経っただろう。目が覚めると辺り一面は赤く焼けた溶岩で覆われていた。皆無事らしい。溶岩の中だけ赤黒く焼け、外側はふてぶてしく真っ黒な石だ。

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巻き添えの羊や牛も数知れない。誰かがほどよく溶けて焼き固まった、手ごろな大きさの真っ黒い石を持ってきた。形もプレート状になっている。僕が生焼けの牛肉のかけらをそこへ載せると、これまたほどよい案配でお肉が焼けてゆく。

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お肉はいくらでもある。見渡す限りお肉と焼けた溶岩だ。僕らは明るい家のガレージでお肉をどんどん焼いてゆき、美味しいステーキのタレもかけてみる。

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家族の分を作り終えるも食材は無限だ。一生美味しいお肉三昧決定だ。時々ラム肉のステーキも作ってみる。

 

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香ばしい香りが辺り一面に満ちてゆく。御用聞きの広井先生に似たおっさんがやって来たので、ついでに尋ねた。ロール状の車が欲しいけど持って来れるかな?すいません、お肉以外品不足の様です。成る程ね。少しだけ残念。

 

考察―溶岩と焼き肉、よい組み合わせである。溶けた溶岩は筆者の脳みその暗喩である。明日の晩はステーキを食べ、脳みそを活性化するべきだ。

 

結語―焼肉屋へ直行

 

 

 

夢の話―症例4   夢でも仕事                                熱帯夜

関東中央病院の例の若い狐顔の先生が当直だ。

 

 

さっきっからモニターの心音がよくない。高井先生は僕にどうしたらいいのか尋ねてきた。まずはエピカテを二本入れてダブルセットアップですね、と言うととても感心していた。早速エピカテを入れ、厳重経過観察だ。狐顔の先生は緊張しているがそこで少し現場を離れた。アドバイスは多少役に立っただろう。もういいかな。このあとの結果が多少気がかりだが。医局に戻って机に座り、ガン患者の受け持ちデータを呆然と眺める。抗がん剤の組み合わせ法や使用濃度が今一つわからない。下の娘に似た大柄な先生が医局へやって来て教科書の幾つかの濃度表を示し、完全な模範解答を淀みなくすらすら教えてくれた。やっぱりガン系統の治療は今一つ好きになれず、知識に身が入らない。そそくさと一人で喫茶室にお茶をのみに行く。フラダンスのミニショーをやっていた。

 

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数人しかいない割に列がバラバラで今一つ巧くない。最前列で見ていた武民教授(灯台産婦人科主任教授)がしっかりコメントしていた。ええ、まずは裾を揃える、そして動きを揃え、息をあわせる。これが大事ですね。さっと見ただけなのに本質を一気に、分かりやすく言い当てたことにいつもながら驚く。喫茶店をこそこそ退出し病棟へ戻る。人気がなくがらんとしている。さっきの怪しい心音の人はどうなったのか少し心配だったがすでに居ないものは仕方がない。薄暗い階段をすうっと降りて行くと例によって体が宙を浮いて進んでいる。とても気持ちがいい。階段を下りると真っ暗な場所で、恐らく小学校の廊下だ。

 

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進むにつれ廊下は明るくなり、体が浮いているので壁や天井向きになってみる。面白い。誰か後ろから探しにやって来るようだが天井からぶら下がって嚇かしてやろうかと思い、逆さまになったが気づかず惜しくも向こうへいってしまった。電気をつけトイレの扉を開く。そういえば浮いて進んでいるときは100%夢のなかなんだなーっと考える。窓の外はもう明け方で、時計を見ると朝の3時だ。よかった、まだ間に合うぞ。今日は一人で南のリゾートホテルに来ているんだ。学会出張だった。嬉しい。

 

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着ている青いシャツとズボンの洗濯をしたい。コインランドリーで3時間かかるので朝まで充分だな、考えてほっとする。今日の予定が楽しみだ。

 

考察―教授はさぼって喫茶店にいてもよいが平の医者はさぼるな。浮ついてる。喫茶店でのフラダンスショーは風営法違反の疑いがあるので早速当局へ通報すべきである。

 

結語―仕事しろ

 

 

 

夢の話―症例5 冷や汗の医局カンファレンス                 盛夏

 

今日から灯台産婦人科の勤務に復帰だ。随分と久し振りになる。産科勤務だ。夕方に医局会があり前から2番目に座る。席についている医局員は皆若く、顔見知りはいない。少し不安気味。薄暗い会議室には大きな黒板があって、まるで中学校の教室だ。

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白衣姿の医局長の藤見先生は妙に張り切っている。黒板の前で仁王立ちしている。他にも名前の知らない怖そうなスタッフがあと二人程こっちを睨んでいる。それにしても新人医局員が多い。ざっと50人位は出席している。前の方からテストの答案用紙が配られてきた。今日のテーマはよりによって腫瘍関連だ。全部で6問ある。抗がん剤の特徴を書いた文章問題の穴埋め式で抗がん剤の名前を記入する。わざわざ空欄の後ろに難しい一般名が英語で書いてある。一番上の問題はかろうじてシスプラチンだとわかった。2問目から皆目見当がつかない。お手上げだ。解答の時間が迫る。中学2年生の時英語の授業を受け持った厳しい菅先生が医局員を次々と指名して答えさせている。こっちの方に来ないでほしい。気付くともう間近に迫りじろりと空欄ばかりの答案を睨んでいる。えーと蔵持君、今日は調子が良くないようであまり答えになってないけど、この答えは….だね。ダメだねえ。次の問題。他を向き呆れながらそそくさと行ってしまった。それにしても難問だ。脂汗が滲む。

分からなくて遂に後ろの若い奴に見せてもらう。良くできている。腫瘍総ハウプトの小八杉先生がすぐ近くに座っていた。睨みつける目が合いすかさず目をそらす。それにしても今日の問題はよりによって苦手な腫瘍関連ばかりとは。斜め後ろの席の奴がタブレット型端末を使い正解を見付け出した。藤見医局長が労働基準の安全要件を訊いている。前の列から横一列6、7人全員を立たせ、順に答えさせる。不正解な者は惨めにも立ったままだ。中の一人が発言する。えー、光と音と室温、いずれか一点でも越えるといけないんじゃないですか。藤井先生が頷く。もう一人が更に答える。振動も入ります。皆優秀、よく知ってるなあ。見当もつかない。次は自分の座っている2列目だ。WSPの労働基準なんてICUの教科書にしか載ってないよ。産婦人科領域じゃあないよ。1列目の奴等はもう全員が着席した。困った。自分の座る席の番だ。また、脂汗が滲む。

 

考察―予習復習はしっかりと。教室では一番後ろに座るのが無難である。

 

結語―中学では一生懸命英語を勉強したが大したことはなかった。医学部を卒業してその100倍以上英語にかかわったがそよ風も吹かなかった。

 

 

 

夢の話―症例6   混沌の章                         寝苦しい夏

朝の日差しが怪しい。房総半島のどこかだと思う。未知の原野はよそよそしく、どこまでも無関心だ。

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妙な静けさに包まれ、遠くからかすかな海の気配がする。ささやかに嬉しい気配だが、空間は欺瞞に満ち、奏でる潮騒すら空しい。

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足元の小道は白けたように眩しく光る。どこへ続くのか。困惑がゆっくり野に広がる。今日は確か慶応大学医学部の受験日だ。いまだに試験会場へ着かない。深い木々の梢もカラ元気を見抜かれて薄暗い。その無機質な樹木は寂しいトンネルとなり、虚ろに振り向けば無限の暗黒が続く。そろそろ着いてもいいころだ。愛妻も無言で後をついてくる。大きく曲がりくねった小道をだらだら下り、もう一度念入りに曲がると、深い梢の切れ目から眼下に青い海と無限の水平線が広がっていた。

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息を飲む。海は以外と近い。生き生きと照り返す白波は確かにまぶしく、しかしその裏側は影絵と同じで音がしない。妙だ。どうも試験は難しかったようだ。先へ進むと白く古びた小さな一軒家が目に留まる。うらぶれて人の気配がしない。裏庭へ続く小道から勝手口をかってに開け、引き寄せられるように中へ入る。そこは2階の薄暗い勉強部屋だった。中学生の頃一時期住んでいた借家の一室だ。部屋の主はもういない。懐かしさと不信感を背中に感じながら足早に過去の部屋を通り抜ける。奥の怪しいドアに突き当たり、開けてみる。小さなトンネルの入り口だった。奥は乳白色の光で満ち、何故だか不安が和らぐ。入ってみよう。

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光のトンネルは人が屈んでやっと通れるくらいに狭い。狭い空間をぐるりと石灰質の岩がとり囲み、奥へ進むにつれ更に狭まってゆく。

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ついには人一人やっと潜り抜けるかどうかの穴になってしまった。苦心して進む。やがて穴は上方へ向かう。身をよじりつつ何とか頑張って這い上がる。きつい。息が苦しい。所々壁には縦方向へ大きく伸びる狭い隙間もあり、この明かりとりのお陰で幾分か明るい。人生の息抜きか。登りきった所は天井を厚い岩盤で覆われた10メーター四方程度の、低く薄暗い洞窟だった。床の穴から這い出る。誰もいない。洞窟の一方は大きく開口し、遥か眼下に真っ青な海が広がっている。ザザーンと波音が強烈に響く。

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眩しさに思わず目を細める。洞窟の奥から優しい朝日が差し込み、誘いをかける。出口か。

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頭を屈めそこへ向かう。緑の木々におおわれた深い森の空間にいきなり出た。ここは何処だろう。辺りを見回す。困った😖💦。

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今来た場所も緑の陰に隠れている。帰る方角が分からない。

 

考察―道は苦悩、青い海は希望。狭い穴は人生そのものだ。

 

結語―旅に病んで夢は枯野を駆け廻る(芭蕉)

 

 

 

皆様に良い夢を。

 

平成28年、秋も深まったころ

 

 

 

 

本論文に関わる著者の利益相反関係:

(+_+)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文献 imageリスト

 

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image3           ジュラシックジョーズより

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image5           クジラを撮るー南氷洋に挑んだ山男の記録 八木下弘 毎日新聞社

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image7           (写真掲載準備中)

image8           撮影 三谷烈弌 (RM LIBRARY163「京王線グリーン車の時代」ネコ・パブリッシング刊より

image9          agui.netよりhttp://www.agui.net/tasya/jnr/jnr52.html

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